醤油の3つの製法。 食材を何倍にも美味しくする調味料「醤油」の秘密
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大豆と小麦を製麹し、微生物の力で発酵熟成「本醸造方式」
熟成なしでも製造可能「混合方式」
醸造過程でアミノ酸液をプラスして熟成「混合醸造方式」
今や日本が世界に誇る万能調味料。
そのまま素材と合わせても、調理をしても美味。
食材を何倍にも美味しくするその妙味の秘密は、いったいどこにあるのでしょうか――。
いい醤油の原材料は「大豆・小麦・食塩・米」。
伝統的な製法に則った本物の濃口醤油なら、表示される原料はこの4つ(米を使わず3つの場合も)。食塩を除く原材料を麹にして食塩水で仕込まれる。風味は素材から十二分に引き出され、余分な物を加える必要はない。
大豆と小麦を製麹し、微生物の力で発酵熟成「本醸造方式」
主な原材料:大豆(脱脂加工大豆)・小麦・食塩/製造期間:4カ月~
●醸造原料は穀物素材のみ
蒸煮した大豆と炒って砕いた小麦で麹を造り、これを食塩水に仕込んで発酵熟成させ、諸味を造る。淡口醤油の場合には、できあがった諸味に蒸した米や甘酒を加えて味を調える。原材料には米が表示される。
●微生物の力で発酵・熟成
木桶やタンクの中で寝かせ、ゆっくり発酵熟成させる。木桶の場合には空気中や木桶に棲む微生物の力を借りるが、大きなタンクで発酵熟成させる場合、培養した乳酸菌や酵母を加えているところも。
●期間を短縮する適温醸造法も
自然に任せれば熟成も含め最低1年は必要だが、諸味に麹菌酵素を添加したり醸造温度を調節して季節に関係なく醸造し、1年未満で製品化することも可能。
熟成なしでも製造可能「混合方式」
主な原材料:アミノ酸液・脱脂加工大豆・小麦・食塩ほか/製造期間:即日~
●戦後の食糧難で生まれた手法
材料の決定的不足の中で、研究開発されて始まった製造方法。脱脂加工大豆(かつては小麦グルテンも)を塩酸で処理し、中和して得られたアミノ酸液を、諸味を搾った生揚げ醤油とブレンドして造る。
●アミノ酸液は8割まで
アミノ酸液を合わせる生揚げ醤油は、基本的に本醸造のもの。また、アミノ酸液は窒素換算量で全量の8割まで使うことが可能。醤油としての風味を出し、味を調えるために甘味料や調味料(アミノ酸)、色を調えるためにカラメル色素などが添加される。
●発酵も熟成も一切不要
既成の醤油をブレンドすれば製法上発酵は必要なく、熟成の有無も問われないので、即日の製造が可能。
醸造過程でアミノ酸液をプラスして熟成「混合醸造方式」
主な原材料:アミノ酸液・脱脂加工大豆・小麦・食塩ほか/製造期間:3カ月~
●途中までは本醸造と同様
かつては新式醸造と呼ばれ、本醸造よりも安価に短期間で出荷できるため、戦後から高度成長期にかけて主流だった時代もある。途中までは本醸造と同様の工程。
●アミノ酸液を加え発酵・熟成
醤油諸味にアミノ酸液や、植物性タンパクを酵素で分解した調味液を加え、熟成させる。なお、アミノ酸液や調味液は大手食品メーカーが供給している。
●一部の地域で好まれる味
九州や北陸などは、混合醸造・混合方式の醤油の比率が高い傾向がある。九州は、甘みの強い醤油の味に馴染んでいる地域。醤油が高価な贅沢品であった時代に、添加物で甘さを出した醤油が代わるものとして歓迎される素地があったと思われる。
(雑誌「自遊人」2011年3月号に掲載)
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いい醤油の原材料は「大豆・小麦・食塩・米」。
伝統的な製法に則った本物の濃口醤油なら、表示される原料はこの4つ(米を使わず3つの場合も)。食塩を除く原材料を麹にして食塩水で仕込まれる。風味は素材から十二分に引き出され、余分な物を加える必要はない。