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国内、世界で20の受賞歴! 魚の旨みを引き出す達人・山根さんの魚料理

自遊人編集部 榊原香

2018.02.20

Index

素材の旨味を引出す”塩づかいの名人”山根さんのものづくり

大ぶりの食べ応えあるさんまの無添加・自家製だれの蒲焼き。
「宮古の極み 秋刀魚」

三陸沖で獲れたさんまを米ぬかで熟成・発酵させて寒風干し。
「さんま 宮古縄文漬」

小さな会社から、家庭料理の延長にある、愛情と手間を惜しまない手づくりの美味しさをお届け。

素材の旨味を引出す”塩づかいの名人”山根さんのものづくり

「三陸海岸の宮古という町に、素晴らしい水産加工品を作る会社があるんです」。震災のあった2011 年、料理研究家の冬木れいさんからいただいた1本の電話をきっかけに山根商店・山根智恵子さんとのお付き合いが始まりました。山根さんが作る加工品は、「塩梅の天才」と冬木さんが絶賛するのも納得の、素材の旨味に溢れたものばかりです。
 
国内、世界で20の受賞歴! 魚の旨みを引き出す達人・山根さんの魚料理

大ぶりの食べ応えあるさんまの無添加・自家製だれの蒲焼き。
「宮古の極み 秋刀魚」

晩秋のとある日、山根さんから 「紹介してなかった自慢の品があるから、食べに来て」と1本の電話が入りました。早速訪ねてみると、待っていたのはホカホカご飯の上にのった肉厚の「サンマの蒲焼き」。 「日本の優れたものを選んで世界に紹介する「The wonder 500」に2年連続で選ばれたんです。より美味しくなるように、今も試行錯誤を繰り返している自慢の品だから、ぜひ食べてみてほしくて」
 
三陸の海で揚がった脂ののった肉厚のサンマを無添加の自家製たれに漬け込み、丁寧に焼き上げたこの蒲焼き、一見すると、さばと間違えてしまうほどのインパクト。

「ウナギの蒲焼きの美味しさに負けず劣らずのものを作りたかったんです。サンマは皮がデリケートだから、丁寧に皮目を残して。美しく仕上げることにもこだわりました」
 
ひと口頬張れば、身はほくほく、 タレの染みた皮はトロッと濃厚。陸前高田の八木澤商店の醤油と地元の酒蔵の清酒、味醂、いずれも無添加の調味料で仕上げたこのタレも、コクがあるのに自然な旨味で、それぞれが美味しさを引き立てています。 「ウナギを食べるときに粉山椒をかけるでしょう。アレンジして、実山 椒を使いました。そのままのせてウナギの蒲焼き風もいいし、刻んでひつまぶし風に散らしても。白米はもちろん、玄米にも合いますよ」
国内、世界で20の受賞歴! 魚の旨みを引き出す達人・山根さんの魚料理

三陸沖で獲れたさんまを米ぬかで熟成・発酵させて寒風干し。
「さんま 宮古縄文漬」

続けて、「これも自信作」と登場したのは塩を加えた特製の米糠に漬けこんで熟成させ、天日干ししたサ ンマの干物、「宮古縄文漬け」です。

「お腹を開いてワタを取り出し、生臭さが残らないよう1本1本ブラシで丁寧に血合いを洗い流します。そ れを塩と糠に漬けて熟成させた後、天日干しに。鮭は口を上に吊るしますが、サンマは尾を上に。そうすると、口先から汚れが出て、きれいに仕上がるんです」

甘塩で仕上げたしっとりやわらかな身と、パリパリとした皮の香ばしさが口中で一体となって、旨味が口 いっぱいに広がります。 「1本ずつ作業から手間がかかるけ ど、蒲焼きにしても縄文焼きにして も、皮まで美味しく食べてほしいから愛情込めて作らないと」
 
世界三大漁場の一つと言われる岩手県沖。昭和35年頃、ここ宮古はサンマの集結基地だったそう。 「大量の船が集まり、そりゃ賑やかでしたよ。昭和45 、 46年頃は魚もいっぱい獲れました。市場の端から端まで、木箱に入ったカジキマグロが 並んだときもありました。でも、時代とともに基地が釧路に変わり、漁獲高も年々減少しています」
 
塩ひとつで魚の旨味を引き出すこと、それに加えて、郷土の味を未来へ残すためにチャレンジすること、 それが「今の自分が目指すものづくり」だと山根さんは語ります。
国内、世界で20の受賞歴! 魚の旨みを引き出す達人・山根さんの魚料理

小さな会社から、家庭料理の延長にある、愛情と手間を惜しまない手づくりの美味しさをお届け。

「宮古はこれだけ魚が豊富なのに、特産品というものがないんです。例えば、「南部鼻曲り鮭」という美味しい鮭があっても、鮭といえば北海道や新潟・村上の名前が挙がります。 日本海側は長い冬を越すために保存食が発達して、それが郷土の味になりました。それに習って、宮古で昔から食べらてきたもの、新巻鮭を使って特産品ができたら、といったことも考えています」

「でも…」と山根さんは続けます。 「今は、赤い紅鮭の方が食欲が湧くからと、新巻鮭の白い身は好まれな い。また、脂の多い養殖の銀鮭の方が美味しいと言われるなど味覚もかわってきています。塩辛なんかみても、化学調味料がたくさん使われて いて、その味になれてしまっているんですね。食の原点は1万年以上続いた縄文時代にあると私は思っていますが、当時は少ない塩で、旨味を感じとれる味覚があった。当時に思いを馳せ、「縄文漬」という名前を付けたんです」
 
父が築いた『山根商店』を引き継ぎ、当初は首都圏に向けた仲買をしてたそうですが、2004年から加工品の販売をスタートしました。 「“魚が好き”が原点。2005年から様々な品評会に出品し、おかげさまでいろんな賞をいただいてます。それも、宮古の魚の美味しさを多くの人に知ってほしいから。小さな会社ですから、家庭料理の延長にある、手づくりの美味しさをお届けできたらいいと思っています」

(雑誌「自遊人」2018年2月号に掲載)
国内、世界で20の受賞歴! 魚の旨みを引き出す達人・山根さんの魚料理
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