東京・広尾に居を構える、日本料理店『分とく山』。店主の野崎洋光さんは、伝統を踏まえながら、独自の理論を展開し、日本料理界に新風を巻き起こした人。例えば調理技術ひとつとっても、野崎さんは「常識」と言われていることをただ「常識」ととらえて、当たり前に過ごすことはありません。常に自身の体験を通して、技術ひとつひとつを野崎流に昇華させてきました。その評判はあっという間に広まり、店には新世界を味わおうと食通がこぞって通い詰めるように。ミシュランガイド東京二つ星。名実ともに、日本を代表する料理屋の一軒です。
今回、自遊人編集部では、野崎さんに、「どんな調味料をお使いですか?」と質問。そして、こんな答えをいただきました。
「調味料の話をするならば、まず味噌についてお話をさせてください。料理屋の味と家庭の味。例えば味噌汁ひとつとっても、とても大きな差がありますよね。これがなぜだかわかりますか? もちろんだしの差がとても大きいのですが、なによりも違いが出るのは〝味噌”です。
昔ながらの〝天然醸造の味噌”でなければどんなにいいだしをとっても奥深い味にはなりません。だから、美味しい味噌汁を作りたいならば、天然醸造の味噌を使うこと。これが大原則なんです」
天然醸造の味噌とは、その土地の気候・風土の中で長い年月をかけて発酵、熟成された味噌のこと。それに対して、スーパーや百貨店で安く販売されているほとんどの味噌は〝速醸法”という製法で作られたいわば即席味噌のようなもの。この味の差が、料理の味に深い差をもたらすのだと、野?さんは教えてくれました。
さて、そんな野?さんのお店「分とく山」。この人気店の料理に欠かせないのが、『中定商店』で造られる〝豆味噌”だと言います。
「中定さんのところの豆味噌に出会ったのは、もう15年も前になります。ほら、こうして粒が残っているでしょう。だから旨いんです。豆の香りがふわっと鼻の奥まで広がり、余韻が残る。実に、ふくよかです。最初に食べた時、この味噌は生きている。これこそ本物の味噌だと思ったんです」
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豆の粒を残した特徴的な姿が印象的な豆味噌。大豆の香りが濃厚で、水分量は少なく食感も特徴的。独特のほのかな苦味とコクがある。塩分量は11%。
国産大豆と塩だけで作られた本物の味噌。
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